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光線

「色彩」を勉強するためのやつ、か、文章貯めとくやつ

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S.S.5 囚人



網目、で、視界が覆われている。
おそらく、それのせいで、
ここは檻の中だったという知覚が起こる。

空気は湿潤、それでいて無臭で、無味。
音は、
そう。音がさっきから聴こえている。
あるいはそれのせいで、ここが檻の中だと、知覚したのかもしれない。
音は、とても規則的で、と形容したい。

「やぁ、お嬢さん。気分はどう?」

「まだ喋れないのかい?
まぁ、いいよ。無理はしなくても」

規則的、と言うのは 、
それが何度も何度も繰り返された音だからで、

「ただし、喋ってくれないと、
君の罪はますます重くなるんだよ」
「!・・・罪ですって?
私が何の罪を犯したっていうの!」
と、反射的に私は言う。

「アッハッハッハッ・・・・」

彼の、この高笑いを、私は何度聞いたのだろう。

「やれやれ、君は芝居が上手いようだね。
でも、もう観念した方が良い。
証拠の品はあがってるんだ。これ以上悪足掻きはやめなよ」
「ふん。
一体何の話しなのよ!
私は何もやっていないわ!」
と、私は言い、ここからしばらく間が空く。

「・・・」

この間を使って、彼、は静かに怒りを蓄えるのだが、
しかし本当に彼が怒っているのは、

「いいかげんにしやがれ!
化けの皮被った女狐が、、
さんざん男を誑かしておいて、よくそんなとりすませていられるなぁ。
お前みたいな奴は、処刑されるのがふさわしいんだぞ!」
「知らないって言ってるのが分かんないの!
あんたこそ、無知で頑固で汚らわしい・・・」

だんだん音が聞こえなくなっていく。音が出力されてないからではない。私達の感覚器官の問題だ。
それらは意味の無い音だから、
鼓膜を叩くだけ叩いて、私達の脳を刺激する事はない。

で、彼が怒っているというのは、多分、昨日行ったコンビニの、店員の態度が悪かった事、
とかだろう。


「はい、カット!」
あ!、そうそう。
この音だけ、聞こえればいい。

S.S.4 青い闘牛





雨があがると、音が止み、
辺りは薄く煙って、
足元が柔らかくぼけていった。

身体が青白い背景の一部になっていく。

俺は顔を上げ、
近くに何か温かい色がないか探してみた。

青白い歩道、
青白いガードレール、
青白いアスファルトと砂利、
だめだ。

俺は仕方なく手袋を脱ぎ、自分の指先を見つめる。
指先の赤色は少し白んでいた。

多分、俺は少しだけ緊張していたのだろう。いや、あるいは憤慨していたのかもしれない。
闘牛が赤色に突進するように、
俺は何か温かい色を探した。

隣にいた少年が横目でこちらを見る。
「ねぇ、絆創膏ちょうだい」
少年は強張った顔をしていた。
「あぁ、ちょっと待ってな」

二人の吐く息は白い。
世界全体は青白かった。
少年の唇の薄紫があるだけだった。
と、ふいに、それは動いた。

「虹で指先を切っちゃったんだ。」
得意げな顔で、少年は笑う。

少年の指に灯る赤。
俺はまぶしくて、目を細める。


S.S.3 夢

曇った、巨人が窒息してしまいそうな夜空の下で、僕は草原に立ち、眼を見開いていた。
僕は、悪夢を見た。

それはそれは恐ろしい悪夢を、僕は見たのだ。
その悪夢は僕を刺激し、視界を曖昧にし、更に僕に躍動を与えた。
放っておけば僕は狂人のように駆け回り始める。
そんな予感がする。

恐怖とかじゃなくて、とにかく頭の中で何かが爆発するような気分だ。
遠くの空ではグリフィンの強靱な羽ばたきが何かの暗示のように聞こえている。
僕は興奮を抑えるために、そして気を紛らわすために、カルシウム入りのチーズの袋を破り捨て、中身をむさぼった。

心臓が突風にさらされている。
身体があまり言うことを聞かない。
それでも僕は、なんとかチーズを口の中に押し込む。

次の瞬間。
グリフィンが僕目掛けて着地し、僕の手からチーズをうばいとってしまう。
なんてことだ。
僕は湧き上がる怒りを抑えることができない。
その、突発的な怒りは、例えば駄々っ子が自分の欲しいものを親にねだって足を踏み鳴らすような怒りとは訳が違う。
もっと、純粋な生物学的な怒りだ。

気づくと僕は、そのグリフィンを殺し、皮を破り、肉を食らっていた。

とにかく、僕は悪夢を見たのだ。
それはとても恐ろしい悪夢だったのだ。
早いとこなんとかして気を静めないといけない。
このままでは、きっと、発狂してしまう。
血でベタベタの両掌を見つめながら、僕は湧き上がる躍動と闘った。
しゃがみこんで、眼を瞑って、
じっと耐えた。
瞼が燃えるように熱い。
身体中から火花が飛んでいるのではないだろうか。
おそらく、今の僕の姿を誰かが見たら、道化師が魔術の練習をしていると思うに違いない。
指先から金色の火花を出し、
たくさんの汗を流しながら、

僕は耐えた。

躍動が、僕の体内で血管を手繰り寄せ、僕を人形のように操ろうとしている。
僕は必死に耐えた。
眠りに就くことなく、ひたすら、僕は耐えた。

気がつくと、もう夜はあけていた。
暁が闇をさらう。
閉じたままだった眼を、僕はゆっくりと開いた。
するとまず、グリフィンの嘴の辺りに、僕のチーズが転がっているのが視界に入る。
僕はそれを拾い、
グリフィンの涎が付いてない所を齧り、しばらく茫然とした。

死体の赤と黒、冷たい空気。
そしてチーズの風味。
僕は悪夢の余韻に耐え切ったのだ。
達成感に差す朝日。
流した汗が、火照った身体に心地よかった。

ところで、あれ、どんな夢をみたんだっけ

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