光線

「色彩」を勉強するためのやつ、か、文章貯めとくやつ
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長編

長い文章をつくろう その1

00-01


青年は、
「片方ずつ足をあげてごら」と言い、少女は素直にそれに従う。
青年は、少女の瞳だけを見ていた。
少女の瞳は、しかし何も語らない。
「じゃあさ今度ボクの体を触っ
てみて」
少女は体勢を変える。

ところで、テレビが点いていた。薄暗い室内の唯一の明かり。
ぼんやりと、2人を照らす。
壁に描かれる青年と少女の影。
影はやがて融けあい一つになった。
テレビのスピーカーはやけに和やかな音楽を流した。
ガタッ、
「も、もしさ、気持ち良ければ気持ちいいっていいなよ」と青年は囁く。
少女は
ずっと前から無反応であり続けることを決めてたので、少し困った。
「うん。」とだけ少女は言う。
「あまり、、、声を出さないんだね、、、」
ガタッガタッ
「でもさ、ボクはその方が良いよ。君、とっても可愛い」
ガタッガタッ、
半開きのドアから乾燥した外気が侵入し、それが少女には心地よかった。
「ぁん、、、」と呟いてから、
少女はその先のことを何も考えていなかった。
「あぁ、そう!よかった。やっぱり気持ちいいんだね!」
唐突だがここで青年は、嬉しさのあまり狂ってしまう。
想像してみよう。狂うほどの嬉しさ。
いや、誰もが確かに経験してるはず。嬉しくてこの世は狂ってしまってるんだから。
「、、、あぁ、、、あぁぁぁぁ、僕も気持ちいい。僕も、気持ちいいよお!」
ガタッ、ガタガタッ、
少女は、
晴れの日の草むらの湿り気を思い出した。
「ううぐうぅ、、、ごおおおぅ、、、ふんんんん」
少女は、目を輝かせた青年の描く陰鬱な絵画を思い出した。
ガタガタガタタッ
少女は、蠅がうごめく水面を思い出した。
やせた犬を撫でようとする肥った女性を思い出した。
少女は、虚しかった。
この作品のテーマは「他人」だ。
空の際の太陽が、バッドエンドを警戒している。

ガタッ、、、
物音が止んで、静かになる。
青年は正気をとりもどす。
と同時に、地獄のような虚無が胸をつらぬく

またしても狂ってしまいそうだったのだが、青年はなんとか取り繕う。虚無を怒りに変換することによって。
「なんだか、悲しい目をしてるね」
青年はまじまじと少女を見つめた。
少女はしばらく、息を整えるのに神経を注いでいた。
青年はなりふり構わず、それでいて注意深く、少女の瞳を覗き込んだ。
悦びとか、幸福を、その瞳の中に探した。
だが、見つからない。
「なにが、そんなに悲しいのさっ」
青年は、おもむろに拳をふりあげ、殴りつけた。
一発。二発。三
発、、、。

少女は泣き叫び、暴れ、もがいた。
青年は、少女に対するかすかな憐みの情を感じて、追撃をやめた。
血。咳。耳障りな呼吸の音。
青年はようやく落ち着いてきた。

ふぅ、、、ごめんよ。ボクにも、、その、止められないんだ。こういう、、、」
青年は、ここにきて、完全にクールだ。
薄暗がりの中の壁の色。少しだけ血が飛び散っている。
「ボクはクズだ。、、、クズだ。本当。」
少女は今、気絶するほど強く殴られたので目が開かない。そのため全神経は耳に集中している。
加湿器の音。乱れた息。和やかなBGM.。
ちなみに青年は、この状況に絶望を感じるほどシリアスな性格ではない。
少しの快感と、自制心と、自尊心、そして少しの少女に対する憐みを感じていた。
少女の頭はとてもぼぅっとしている。
「、、、」
夜が近づいていた。夕日はもう沈みきってしまっていた。
冷たい雨が降りはじめていた。


初めての一滴が街の石畳に染みた。
それを見ていた派手な服を着た女。
「ん、あれ、ところでさぁ、チカは?」
「え?、、、わかんない、けっこー前からいないよ」

やがて、20滴目。300滴目。
「うーん、そう。ねぇ、雨降ってきちゃったよ。チカどこいったの」
街はおだやか
で少し和やかだった。
控えめな雨滴達は、だからあえて騒ごうとはしない。
「タカシ君がさぁ、さっきまで付き添っててくれてたじゃん?」
「あー、タカシ?アイツもいないよ。2人でどっか行ったんじゃない?」
「ヤバ。ユーカイじゃん」
「アハハ」
街は、輪郭を曖昧にされつつあった。
街灯が挑むように発光し、石畳がそれを精一杯反射するが、
街はひたすらにぼやけた。
「、、、てかさ、私、タカシ君に電話かけるわ」
「んだね」
雨滴達は、けっして騒がない。
静かに、語りかけるように、自分たちの存在を主張し続ける。

「ん。
あれ、タカシ君、家にいるの?
は?なに、どこ?ホテル?
なんでホテルにいんの、こっから近い?
ん、
あぁ、うん、いや、よくわからない、
まって
今から行くよ、待ってて」
電話をかけた女は、隣にいた友人に別れを告げ、そのまま急いでどこかに行ってしまった。
取り残された女の友人。
何気なしに手元のスマホに目を落とす。

街は今、体温を奪われながら、透明の澄みきった液体の中で膨張を始めていた。
建物の輪郭がアメーバのように、闇に溶け始める。
街は今、孤独の中。
膨張というより、これはおそらく、霧になろうとしていた。
霧になって、ファンタジーに陶酔しようとしていた。
現実逃避。
それも堂々と、健全な美学をともなって、ロマンチックに。
殻に引き籠りがちな街の、
そのために、住人は不安を抱えた。
不安は晴れそうにない。
宵闇がしのびこむ。
雨脚が強くなってきた。

青年と少女。そして少女の母親。
ホテルの薄暗い照明が、3人を優しく、あるい
は何の興味もなく、ぼんやり照らす。
街と同じくコントラストが曖昧で、だんだんと冷たく、灰色がかる。
母親は泣き崩れていた。青年も泣きそうだった。
少女は、少しずつ腫れがひきはじめた瞼の隙間から、窓の外を見ていた。
おそらく警察沙汰とかにはならないだろう、と、少女は思う。
というか、そうなって欲しくない。
この非現実の世界にもう少し浸っていたい。
いや、
というか何もしたくない。
らためて、少女は虚しかった。
「ごめんなさい。もうしません。ごめんなさい。チカちゃん、申し訳ありません」
青年は泣き出した。
「私、う、どうしたら、いいか、わかんないよぉ、,、、
う、タカシ君、頭おかしいよ、う、うう、、、」
母親は泣くしかなかった。


慟哭。
が、激しくなってきた雨に共鳴する。



つづく

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